献体(けんたい)とは、教育・研究に役立てるために「無条件・無報酬」で自分の遺体を提供することです。
生前にご本人の意思(+ご家族の同意)で献体登録をします。死亡後、ご遺体は登録先の大学へ搬送され、医学生が解剖学を学ぶために利用されます。
また、献体登録者が死亡した場合、献体前にお葬式を行うことも可能です。提供されたご遺体は丁重に扱われ、献体終了後にご遺骨となり遺族の元に帰ってきます。
解剖は大きく分けて3種類あります。
- 正常解剖: 人体の構造を調べるため
- 病理解剖: 診断の妥当性、死因、病変を調べるため
- 司法・行政解剖: 変死体の死因を調べるため
献体は「1.正常解剖」に関係します。解剖学は全身の構造を学ぶための基礎です。良い医師・歯科医師を育てるためには絶対に必要なものです。
献体登録希望者の増加
最近、献体を希望する方が増加傾向にあります。2018年(平成30年)のデータでは、献体登録者数は29万人を超えています。
登録希望者の増加にともない、登録の一時停止や順番待ちなどを設定している大学もあります。
登録は大学へ、親族の同意も必要
献体を希望する場合は、お住まいの都道府県にある医科・歯科大学(大学医学部・歯学部)、または献体篤志家(けんたいとくしか)団体に登録します。
大学病院ではありませんのでご注意ください。
登録手続きは献体希望者ご本人が行いますが、同時に親族(配偶者・親・兄弟姉妹・子・孫など)の同意も必要です。
純粋に「自分の体を医学に役立てて欲しい」という善意の方が大半です。しかし、「無料で火葬ができる」・「大学が共同墓に納骨してくれる」など、献体の本来の趣旨からはずれた考えの方も残念ながらいらっしゃるようです。
現在、国内には医学部81校・歯学部29校があり、解剖学実習に使用される遺体の98%が献体によるものです。献体は、医学のために必要です。しかし、献体をすると「長期間(1~3年)遺骨が戻ってこない」・「ゆっくりとお葬式ができない」などのデメリットもあります。
本人の意思を尊重することは大切ですが、残される遺族の方の気持ちも大切です。将来、献体をお考えの方は、必ずご家族・親族と十分に話し合い、理解・協力してもらうことが重量です。
献体の登録方法
献体を希望される場合は、生前にご本人の意思で献体登録(無料)が必要です。
臓器提供はご本人が亡くなった後、ご家族様の意思だけでも可能となりましたが、献体に関しては「ご本人の意思」+「事前の登録」が絶対に必要です。
亡くなる直前に献体を希望されたとしても、献体は不可能です。
ご家族などの同意が必要
また、ご本人の意思と同時に「親族(配偶者・親・兄弟姉妹・子・孫など)の同意」も必要です。
実際に大学と連絡を取り献体提供できるのは残された親族です。十分に話し合って同意を得ておくことが大切になります。おひとりさま(家族・身寄りのない方)の場合は各大学へご相談ください。
ご相談・登録は、医科歯科大学または献体の会
一般的には、お住まいの地域にある医科大学(大学医学部)・歯科大学(大学歯学部)、または献体の会(公益財団法人 日本篤志献体協会など)に相談すれば詳細な内容を教えていただけます。
※申込先は、大学“病院”ではありません。
- 献体について、ご家族と話し合い
- お住まいの地域にある医科大学(大学医学部)などに相談
- 必要書類がご自宅に到着
- 必要事項を記入 ※同意者(親族など)の署名捺印が必要
- 書類を返送
- 献体登録完了(献体登録カードが後日届く)
- 大阪大学(吹田市)
- 大阪市立大学(大阪市阿倍野区)
- 近畿大学(大阪狭山市)
- 大阪医科大学(高槻市)
- 大阪歯科大学(枚方市)
献体の過剰で登録ができない場合も
献体希望者の増加にともない、献体登録の順番待ちや仮登録、年齢制限(60歳以上のみ登録可能)、受付の一時停止をしている大学・団体もあります。100%ご希望のタイミングで献体登録ができるとは限りませんのでご注意ください
また、すでに献体登録(本登録)済みだけど、献体を行えないケースもあります。
- 献体登録後、ご家族が反対した場合
- 事故死、変死した場合
- 感染症にかかっていた場合
上記の場合は献体が行えません。
献体提供を実行するのは残されたご親族です。その時、もし反対する方が出てきた場合は献体ができない可能性もあります。
加えて、献体登録時に健康な状態であっても、お亡くなりになった状況によっては必ずしも献体可能とは限りません。
献体と臓器提供の違い
献体と臓器提供、両方を同時に登録することは可能です。しかし、実際に死亡した時は、どちらか1つしか選択ができません。
その理由は、臓器のない遺体は献体対象外であり、献体では臓器を取り出すことができないからです。
先にご説明したように、献体を選択された場合はご遺骨が手元に戻るまで1~3年かかります。臓器提供の場合は、数時間の摘出手術後に退院が可能ですので、ゆっくりとお葬式を行うことが可能です。
臓器提供に関する詳しい情報↓↓
献体前(大学にご遺体を提供する前)にお葬式を行うことも可能です
「献体=お葬式ができない」と思われるかもしれませんが、献体提供前(大学にご遺体を提供する前)に、お葬式をすることは可能です。
お葬式費用はご家族の負担になります
誤解されている方も多いですが、大学や献体団体が葬儀を行うことはありません。
また、お葬式に関しては、あくまでご家族が葬儀社へ依頼し葬儀費用・僧侶への御布施などは自己負担になります。お墓・納骨堂への埋葬なども自己負担となります。
大学が負担してくれる費用は、「葬儀式場から大学までの搬送費用」と「火葬料金」です。
お葬式は48時間以内に行います
基本的に大学側は【ご遺体の引き渡しは死亡後48時間以内】を希望していますので、あまりゆっくりとお通夜・告別式などは行えません。
一般的にはお亡くなりになった当日に通夜を行い、翌日に告別式という流れになります。死亡時刻や状況により、儀式を省略する可能性もあります。
- ご臨終
- 親族が大学・葬儀社へ連絡
- お通夜・告別式
- 出棺(式場から大学へ搬送)
- 防腐処置・献体
- 火葬(1~3年後)
- ご遺骨の引取り
シンプルプラン(葬儀費用:18万円~)
献体提供までの間、ご自宅または専用安置室にてご安置します。お通夜・告別式は行いません。「お金はかけたくないけれど、遺影写真やお坊さんの読経くらいはしてあげたい」という方へ。
家族葬プラン(葬儀費用:30万円~)
ご家族や友人など、少人数でのお葬式プランです。一般的なお葬式と同じようにお通夜・告別式を行いますが、大学への引き渡し時間の都合で、儀式を省略する場合もあります。
お葬式が必要ない(すぐに大学へ献体提供)場合
お葬式や僧侶の読経なども必要ない(すぐに大学へ献体提供)とお考えの場合は、死亡後に大学へ連絡をすれば、病院・施設までお迎えに来てくれます。
大学まで搬送する寝台車費用も大学が負担してくれます。詳細な流れは、献体登録先の大学へご確認ください。
- ご臨終
- 大学へ連絡
- 病院・施設までお迎え、大学へ搬送
- 防腐処置・献体
- 火葬(1~3年後)
- ご遺骨の引取り
火葬・遺骨はどうなるの?
献体終了後(約1~3年)に大学側が火葬をし、ご家族へ遺骨を届けてくれますので、お墓への納骨も可能です。返還日時の連絡もあります。また、大学によっては収骨(お骨上げ)の立会いが可能な場合もあるようです。
ご遺骨の返還を希望されない場合は、大学内の納骨堂や提携先の共同墓地などに納骨されることになります。また、各大学では献体者に対し感謝と慰霊の祈りをささげる慰霊祭を毎年行っています。
ご遺族への慰霊祭のお知らせ、慰霊祭に出席された遺族へその場でご遺骨を返還するケースもあります。(※大学により対応は異なります)。この慰霊祭をもって葬儀とされる方もいらっしゃいます。
献体に対してよくある誤解
「献体=大学が葬儀をしてくれる」・「亡くなった後のことは、全部してくれる」と誤解をされている方もいらっしゃいますが、大学や献体団体が葬儀や葬儀後のサポートを行うことはありません。
あくまで「献体提供されたご遺体は、献体終了後に遺骨にしてご家族様へお返しします」ということです。
- 無料で火葬ができる
- 大学内の納骨堂に無料で納骨してもらえる
- どこかの寺院の共同墓で永代供養してくれる
などの理由で、献体を「葬儀(火葬)代行」のように考える方もいらっしゃるようですが、「無条件・無報酬」・「医学への貢献」という献体本来の趣旨からはずれています。
確かに、大学は【葬儀式場(ご安置場所)から大学までの搬送費用】と【火葬費用】を負担してくれますので、火葬のみでしたら費用はほぼ必要ありません。ご遺骨を引取らない場合は供養もしてくる場合もあります。
合理的に考えて費用もかからず社会貢献ができるというメリットはあります。葬儀や遺骨に対する供養などに無関心な方、経済的な事情により献体がベストな選択と考える方がいることも理解はできます。
まとめ
献体には、「医学に貢献したいという本人の希望」と「残されたご家族の想い」の両方ともに大切です。
心の準備や内容の理解が十分でなかった場合、
- きちんとお葬式をしてあげればよかった…
- 遺骨はいつ戻ってくるんだろう?
- 今、どんな状態なんだろう?
など、ずっと気持ちが落ち着かず、献体を後悔したり大きな悲しみを抱く遺族もいらっしゃいます。
ご遺族はご遺体の状況や火葬日は一切分かりません。「費用がかからない」・「納骨してくれるからお墓も必要ない」などの安易な理由で選択することはおすすめしません。
自身の体を医学に役立てる事はとても尊いものだと思います。希望する本人は、献体に対する自分の考えや思いをご家族・親族に十分に理解してもらい、納得した上で協力してもらうことが理想です。ゆっくりとご検討ください。
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