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認知症の人の口座からお金を出す(銀行6割対応)

認知症の人の口座からお金を出す(銀行6割対応)

2020年(令和2年)3月の新聞記事に

認知症の人の親族らが「本人(認知症になった人)」の生活費や医療費を口座からおろすなどの取引を求めた際、約6割の銀行が「必要な範囲内」で本人以外の取引にも応じていることがわかった。

2020年3月21日 朝日新聞

との内容がありました。

金融機関での取引は「本人」が原則ですが、高齢化が進む日本では「認知症などで判断能力が落ちた人」・「その人に関わる親族」への対応が急務なのかもしれません。全国銀行協会も基本指針をまとめていく考えの様です。

加えて、2025年には5人に1人が認知症になるというデータもありますので、ご自身に関わる可能性も十分にあり得ます。

遺産相続(故人の口座に関する手続き)とは少し異なりますが、大切な事柄だと思いますのでご紹介します。

銀行員が窓口対応で困る件数が増加

全国銀行協会が、会員113行の回答をもとに昨年11月にまとめた「認知症対応に関するアンケート結果」では、6割越えの73行が3年前と比べて窓口対応で困った件数が増加しているようです。

認知症の人は口座のお金をおろせなくなることが多い。
意思能力がない人との取引は無効になる恐れがあり、銀行が資産を守るために取引を制限するからだ。
お金の管理を親族らが支える「成年後見制度」もあるが十分に浸透していない

2020年3月21日 朝日新聞

しっかりと口座名義人の財産を守ってくれるのは安心ですが、親族としては緊急時には臨機応変に対応して欲しい部分もあります。かと言って、銀行側も簡単に出金を認めると、後で家族・親族とのトラブルになる可能性もあります。

双方にちょうど良い解決案は状況によって異なるので、明確な基準を定めるのは非常に難しそうです。

「本人のためなのに、本人のお金が使えない」のももどかしい気持ちになりますね。

参考:銀行の区分(金融庁)
  • 都市銀行:4(みずほ・三井住友・三菱UFJ・りそな)
  • 信託銀行:14(三井住友信託銀行・SMBC信託銀行など)
  • 新しいタイプの銀行:15(ジャパンネット銀行・住信SBIネット銀行など)
  • 地方銀行:64(京都銀行・池田泉州銀行など)
  • 第二地方銀行:38(みなと銀行など)
  • 外国銀行支店:55

令和2年2月28日現在

認知症の顧客との対応で困ることが多い取引「トップ5」

  1. 普通預金の入出金(107行)
  2. 定期預金の預け入れ・解約(104行)
  3. 運用商品の解約・変更(53行)
  4. 届け出情報の変更・追加(43行)
  5. 運用商品の販売(37行)
    ※113の銀行が回答した全国銀行協会の調査から(複数回答)。

成年後見制度が十分に浸透していない

記事には「成年後見制度が十分に浸透していない」とありましたが、確かに「成年後見(せいねんこうけん)」という言葉を聞いたことが無い人も多いと思います。

「成年後見制度」は、認知症などで判断能力が落ちた方の財産管理や身上保護のために2000年に創設されました。

創設時は、親族が後見人になる場合が約90%でしたが、「後見人になるべき親族が見つからない・親族後見人の不正」などから、家庭裁判所が親族後見人の選任に消極的になり、2018年には親族後見人が約23%まで減少しました。

現在は、専門職(弁護士・司法書士など)の後見人が増えています。

MEMO

海外では親族が後見人になる場合が一般的で、国際的には日本の現状は特異だそうです。

成年後見制度の利用者数は徐々に増えてはいます。2018年のデータでは、利用者数は約22万人。しかし、潜在的な需要(判断能力が不十分とみられる人の総数:推計約870万人)のわずか2%に過ぎないようです。

成年後見人の申立てに関する参考データ

平成31年1月~令和元年12月までの1年間におけるデータでは、

  • 申立件数:35,959件
  • 容認件数:34,002件(申立件数の約95.5%)
  • 審理期間:2か月以内⇒約75.7%、4か月以内⇒約94.4%
  • 申立てをした人:子⇒約22.7%、市区町村長⇒約22%、本人⇒約18.6%
  • 開始原因:認知症⇒約63.3%、その他:知的障害・統合失調症・高次能機能障害
  • 申立ての動機:預貯金などの管理・解約⇒約40.6%、身上保護⇒約21.8%
  • 本人と成年後見人の関係:親族⇒約21.8%、その他(弁護士・司法書士など)⇒約78.2%
    最高裁判所事務総局家庭局データより
    大阪府のデータでは、申立件数:3,170件(内:市区町村長の申立て586件)でした。

各銀行の「親族との取引対応」について

本人との取引が難しい場合、親族との取引対応については「成年後見制度の紹介」が105行と最も多く、次いで全体の約6割の64行が「必要な範囲内で本人以外の取引に応じる」との回答です。続いて、「証明書類で親族かを確認」61行、「複数の推定相続人に確認して応じる」55行。

銀行側としては、

取引は【本人】が原則なので、きちんと本人の代理人となる後見人を立てて取引してください

ということですね。

ただし、後見人が決定するまでの審理期間(家庭裁判所へ申立~容認)が1~2か月程必要ですので、急を要する場合には合わせて「必要な範囲内で対応」という流れだと思います。

必要な範囲内の基準について

「必要な範囲内で本人以外の取引に応じる」と回答した64行ごとの基準は

  • 請求書などの書類を求める⇒54行
  • 現場の個別判断⇒45行
  • 一定の金額基準あり⇒11行

また、金額については

  • 25万円未満⇒1行
  • 25万~50万円未満⇒5行
  • 50万円以上⇒5行

銀行員の声「基準があいまい、家族とのトラブルになる可能性も」

アンケートの自由記述の回答の中には

  • 必要額は個々人で違うと思われ、基準があいまい
  • 認知症とわからず払い戻しに応じ、後日家族とトラブルになる
  • まずは成年後見人制度を紹介し、うまくいかない場合、生活費の引き出しなどを認めるかで判断がわかれる

親族が求める内容や金額、一時的に必要なのか?、継続的に必要なのか?、おひとりおひとり事情が異なるので対応も難しいですね。

アンケートに回答した銀行の9割超の105行が銀行界で共有すべき基本指針づくりを求めているため、全国銀行協会は認知症の人や家族らにどう対応するかについての考えるまとめる方針のようです。

また、厚生労働省の推計によると

認知症の人の数は2025年に約700万人、高齢者の5人に1人にのぼる。

保有する金融資産額は2030年に今の1.5倍の215兆円になる

厚生労働省

との試算もあるようですので、ますます対応に追われるケースが増えるのは確実です。

5人に1人は20%です。確率的にはかなり高いので、他人事とは言えない状況ですね。

まとめ

今回ご紹介した記事では、認知症の人の口座から親族がお金を出す場合、銀行側の対応として最初に「成年後見制度の紹介」、次に「必要な範囲内で対応」とありました。

金融機関での取引は「本人」が原則ですので、本人が認知症で取引できない状態であれば代理人が必要です。

そのため、銀行側として最初に「成年後見制度(代理人)の紹介」が基本的な流れになると思います。一時的に(一回だけ)お金を出すだけであれば、「必要な範囲内で対応」で済む場合もあると思います。

問題は、「毎月の支払いが必要な場合」は対応してくれるのでしょうか?

介護施設等への入居で、毎月一定額の支払い続く場合は「本人の口座から引落し」が一般的です。年金で施設代を支払うパターンです。

もし、毎月の引落しが認められないのであれば、やはり「代理人を立てる⇒成年後見制度の利用」が必要になると思います。

後見人制度を利用する場合の手続き

成年後見制度は家庭裁判所で手続きをします。親族が後見人になることも可能ですが、家庭裁判所への定期的な報告や書類作成などは親族であっても免除されません。その点では第三者(専門家)へ依頼する方がメリットがあります。

まずは、お近くの後見人業務を取扱っている弁護士・司法書士事務所へご相談に行かれるのがおすすめです。

MEMO

親族を後見人に希望したとしても、最終的に誰が後見人になるかは家庭裁判所が決定します。また、後見人の業務は被後見人が死亡するまで続きます。

専門職(弁護士・司法書士など)の後見人への賛否両論

時々、故人様に専門職(弁護士・司法書士など)の後見人が付いている場合があります。どのような仕事・サービスでも同じだと思いますが、ご家族様からの声は賛否両論のようです。

「親切に職務を果たしてくれて、とても助かりました」という声がほとんどですが、中には「ほとんど面会にも来ないし、全然連絡がなかった」という声もあります。

しっかりと後見人の仕事を果たして、お葬式にも参列される誠実な後見人(弁護士・司法書士)の方もたくさんいます。その一方で、財産を着服していたという事件もテレビ等で見かけることもあります。

本来あってはならないことですが、実際に当たりハズレがあるということですね。

銀行・親族、双方の立場を考えると成年後見制度がベスト?

現在、明確な法律や対応策がないので現場で対応している銀行員さんは大変だと思いますし、親族側としても困るケースが少なくないと思います。

銀行・親族、双方の立場で考えると、現時点では、成年後見人(中立な第三者が間に入る)がベストな選択なのかも知れません。

  • 銀行:あくまで名義人のお金なので、きっちりと守る
  • 親族:本人の為に使いたいだけ。不正利用なんてしない

基本的には、悪いことをする人なんていないと思いたいですが、【もしも】を考えると面倒でも厳格な手続きが必要なんでしょうね。

私が親族側で、銀行から「お金を出すには成年後見を…」と言われたら、きっと面倒だなと思ってしまいます。でも、銀行側からすればトラブルを避けたいのも分かります。

完璧な制度・システムはあり得ませんが、時代や社会情勢にできるだけ対応した制度を作って欲しいですね。「本人のお金を本人のために有効に使える」ように期待したいです。

【参考】後見人が付いている場合のお葬式について

予備知識として、故人様に後見人が付いている場合のお葬式のご説明をします。

まず、後見人の仕事は被後見人が死亡した時点で終了します。あとは、最後に残った財産を親族(相続人)へ引き渡すのみです。お葬式に深く関わることは基本的にありません。

故人の財産からお葬式費用を出す場合は、後見人に相談しましょう

故人の財産からお葬式費用を出す場合は、残った財産と未払金との差額などを後見人に確認しましょう。

親族がお葬式費用を出す場合は、特に何も問題ありません。通常通り、葬儀社にお葬式を依頼して大丈夫です。

もし、「お葬式(火葬・収骨)も後見人に任せたい場合」は、後見人または葬儀社に相談しましょう。ただし、少し特殊なケースのため、葬儀社によっては未経験の場合もありますので事前確認が必要です。

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